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イタリア大好き!な働く主婦が綴る日々の雑感、独り言♪                HN 杏

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帝国オーケストラ

昨年、創立125周年を迎えたウィーン・フィルと並んで世界最高峰のオーケストラ、ベルリン・フィル。
そのベルリン・フィルの辛い歴史、と言ってもよいヒトラー政権下でのナチスとベルリン・フィルの関係をそれぞれの立場から当時のメンバー、メンバーの家族が語り、当時の映像記録と共に描くドキュメンタリー映画「帝国オーケストラ」を、夫と一緒に観てきました。

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当時のメンバーで現在も健在ななんと96歳のヴァイオリニストのJ・バスティアンとコントラバスの86歳のE・ハルトマンが語り部となって、これまで語られてこなかった事実を明らかにしていいく、という音楽好きにはたまらない内容の映画です。

ナチス統治下のドイツにおいて、当時のベルリン・フィルはナチの広告塔として扱われ、常任指揮者であったフルトヴェングラーは終戦後戦犯会議にかけられるなどの話は大変に有名ですが、では実際にオケ団員はどうだったのか、ということは今まで封印されてきた、と言ってもよいくらい表にでてはきませんでした。

この映画で初めて当時の団員の気持ち、様子などが明らかにされ、団員の中にも実際にナチス党員だった者もいれば、そうでない者、反ナチだったもの(表にだしてはいないけれど)がいて、非常に難しかったであろうメンバーの意思統一がどのようになされていたのか、等など非常に興味深く観ました。

証言している96歳のヴァイオリニスト、バスティアンは「音楽を奏でることで、ドイツを守れると思った、ただ演奏を続けたかっただけなのだ」とその老いてなお音楽への情熱を失わない強い思いから語っていて、胸を打ちました。

彼らは団員である、ということから兵役を免除されていました。
ですが、あくまで戦場に赴かなかっただけで、この映画を観る限り、団員は日々戦いの中にいた、と言っても過言ではない、と思いました。
誰が自由な音楽の世界から、誰かの意思の下で演奏をしなければならない、という窮屈な世界をよしとするでしょうか。。。

フルトヴェングラーが常任指揮者だった時代のベルリン・フィルは黄金時代だ、と言われていますが、その時期がナチス政権の時代と完全に被ってしまっている悲劇。
当時の映像が映画の中ででてきますが、確かにフルトヴェングラーの指揮で演奏されるベートーベンの第9は素晴らしく、たとえそれがヒトラーの総統就任の祝典のためとは言え、このオケが類稀なる音色を持っていることを証明してみせています。
そのことがこのオケにとってこの時代、不幸をもたらすことになるという悲劇。

ナチの指示のもと、第三帝国の友好国へ、そして傷痍病院へとベルリン・フィルは演奏旅行に出かけることとなって、オケにいたユダヤ系の団員は退団をしていかざるを得なくなり、ナチ党員が団員にいるという純粋に音楽を愛するものには辛く悲しい日々を過ごさなければならなかった日々が、当時の映像を通して描き出され、今、平和な世界でこの至上のオケを聴くことができる幸福を思わずにはいられませんでした。

終戦後、アメリカへの演奏旅行に出かけますが、ニューヨークで反ナチのデモに出会うなど、このオケが好むと好まざるとに関わらず、ナチ政権下に彼らのプロパガンダに使われたことが、戦後になっても暗く影を落としていたことなど、音楽のミューズが見たら嘆き哀しむであろう出来事もあり、団員の気持ちはいかばかりだったろうか、と想像に難くありません。

この映画の監督、エンリケ・サンチェス=ランチが、この映画について「自分だったら、どうしただろうか。」と考えて欲しい、と言っていますが、抗らえない状況の中で、果たして自分ならどのように行動しただろうかと問うてみましたが、答えは出ませんでした。

今、このオケが奏でる素晴らしい音楽は、それらの辛い日々を乗り越えて再び自由に演奏できることの喜びに満ちています。
再び音楽のミューズに愛されてあのような不幸な日々がもう二度とないようにと願わずにはいられません。。。


♪「帝国オーケストラ」ディレクターズカット版
♪ベルリン・フィル創立125周年記念第1弾として11月1日より渋谷ユーロスペースにて上映中
by ank-nefertiti | 2008-11-09 00:29 | 観劇・映画