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イタリア大好き!な働く主婦が綴る日々の雑感、独り言♪                HN 杏

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どくとるマンボウ青春記

朝、携帯にニュース速報で、北杜夫さんが亡くなられたとメールがきました。

北杜夫さん・・・
私が辻邦生を知るきっかけを作ってくれた作家です。

北さんの人気シリーズである、どくとるマンボウシリーズ。
航海記のあとにかかれた、旧制松本高校時代、東北大学医学部時代のことを書いた「青春記」で、そこに出てくる、「最初は先輩、途中で同級生、最後は後輩になった、「小説への序章」などの著作で知られるT」、というのが、辻邦生でした。
この本を読んだのは中学生のころで、そのTというのが、誰なのか、「小説への序章」って?でしたが、その後、その「小説への序章」という評論を見つけたとき、北さんがTと書いていたのが、辻邦生だと初めて知りました。

辻邦生を知る前には、北さんの作品を本当によく読みました。
マンボウシリーズもですが、長編で、あの三島が絶賛した「楡家の人びと」、芥川賞を受賞した「夜と霧の隅で」、「白きたおやかな峰」、「はだかの王様」、「幽霊」、「黄色い船」、「船乗りプクプクの冒険」などなど・・・
好きだったのは、初期の「幽霊」とか「楡家の人びと」。
「楡家・・・」では、登場する人物が本当に生き生きと描かれていて、北さんの文章のうまさに脱帽でした。

何かの本に、「夜と霧の隅で」は、アウシュビッツの写真を見ていて、ふと作品が閃いて書き上げたものだ、と北さんが書いているのを読み、作家って閃きで、作品が書けてしまうのか?と随分と不思議に思い、それが「文章を書く、作家としての才能」なのだとわかって、とても羨ましくもあり、嫉ましくもあり・・・
ふふ、若いと言うことは不遜でもありました^^;

父親が、アララギ派の歌人である齋藤茂吉であることが、北さんにはとてもとても重いものであったことも正直に書かれていて、その茂吉と箱根の山荘でひと夏を一緒に過ごしたときの窮屈さや、茂吉から来る手紙の書き出しが常に「宗吉よ・・・」であったことなど、北さんにとって、父親はなんとも尊敬はしているけれど、煙たいというのか、どう対応したらよいのか困る存在だった様子が手に取るようにわかりました。

ただ、松高時代には、そんな父茂吉に影響されて、北さんも歌を詠んだりしているのが、なんとも微笑ましいというのか、なんだかんだと言って、北さんの中で父茂吉は、本当に大きな大きな人であったことは間違いありません。

旧制高校時代に、トーマス・マンに惹かれ、「ブッテンブロークス」など、当時のドイツ文学の権威である望月市恵先生に習っていたことなども影響していたのか、それがのちの「楡家の人びと」につながっていく過程が青春記ではちょっと見えて、面白いなぁと思ったことがあります。

40代で、躁うつ病に罹患し、躁の時には、軽妙なマンボウシリーズなどを書き、鬱のときには「楡家の人びと」のような純文学の作品を生み出し、文体がまるで違うので、同じ作家とはとても思えないと評論家たちから言われ続けた人でもありました。

そして、大の阪神タイガースファンであることも有名で、たばこを吸っているときに点が入ると、次の攻撃の時に縁起を担いでまた煙草を吸う、などということをしていた、とこれもマンボウシリーズのどれかの作品に書いていて、私はやはりトラキチの父が同じことをしていたので、思わず大笑いをしました。

北さんは、遅れて作家として活動を始めた辻邦生に対して、あれこれと世話を焼き、2人の松本高校時代からの友情は、辻邦生が亡くなるまで、途切れることなく続きました。
辻邦生が亡くなった時の北さんの言葉は、悲痛な思いに満ちていて、ああ、本当によい友達同士だったのだなぁと、北さんの無念を思って、涙が出ました。

そんな2人が、今頃は天国で会っているのでしょうか。

「辻~、やっときたぞ~。どうだ、ここはよいところかい?ここでは自分が先輩だからなんていうなよ!」とかなんとか言っているのかしら・・・

三島とも会って、なんで自分の思いが届かない世界へ行ってしまったのか、と恨みつらみを言っているかしら・・・

遠藤周作さんとも会って、孤狸庵対マンボウなんてことをまたぞろ繰り広げいてるのかしら・・・

奥様が「やりたいことをやっていたので、よい人生だったのではないでしょうか」とおっしゃっていますが、確かにそうかもしれません。

こよなく昆虫を愛し、阪神タイガースを愛し、そして文学を愛した。

ご冥福をお祈りいたします。

そして、北さん、辻邦生という作家を教えてくれて、本当にありがとう!とお礼をいいます^^
ふふ、「僕はね、知らないですよ、あなたが僕の作品を読んで、勝手に見つけたんでしょう。そもそも僕はあなたをしらないしね」と言うのだろうなとは、思うのですが、それでもお礼は言わせてくださいねぇ!



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by ank-nefertiti | 2011-10-27 00:59 | 徒然